編曲指揮をさせて頂きます、サルビア21オペレッタ
今回はヨハン・シュトラウス2世作曲
「ヴェニスの一夜」
本番前ですのでネタバレはしないように、見どころ聞きどころを踏まえ、作曲家目線によるちょっとマニアックな楽曲解説(主にシュトラウス半端ね〜っていう話)を少しだけ。
タイトルとナンバーはヴォーカルスコアから
Ouverture
オペレッタ劇中の曲をうまくつなぎ合わせて作られています。もちろんこれは良くある一般的な作曲方法ですが、このつなぎ方が素晴らしい!華やかでたいへん美しい序曲です。
ヨハン・シュトラウス2世作曲のオペレッタ序曲と言えば、やはり「こうもり」があがりますが、こちらももっと有名になってほしい1曲です。
第1幕
Nr.1 Introduction und couplet
前半はヴェネツィアの穏やかな海や、風の香りがよく音に表されている気がいたします。後半は合唱とスパゲッティー屋のパパコーダが歌う陽気な楽曲です。
Nr.3 Duettino
コミカルな楽曲。編曲の際「変な曲だなぁ」と感じるくらいコミカル。パパコーダの恋人チボレッタを表現しようとすると、こうなるのだなぁと思います。
チボレッタとパパコーダのデュエットですが、今回チボレッタのソロとして。
Nr.15 Lagunen = Walzer
ラグーナワルツという美しいワルツ。
オリジナルでは3幕で主役のウルビーノが歌う美しいワルツを、今回はバルバラ夫人のアリアとして1幕で歌います。
男性が歌う楽曲を女性が歌うと、また違った魅力が発見できておもしろいですね。
Nr.2 Auftrittslied der ANNINA
ゆっくりしたワルツに乗って漁師の娘アンニーナが街へやってきます。前曲もゆっくりしたワルツですがまったく違和感なく、ヴェネツィアのゴンドラがとても想像しやすい楽曲。漁師と聞くと威勢が良いイメージですが、アンニーナらしく優雅に魚を売ります。
Appendix DELAQUA
今回の挿入歌。ポルカ「風の精」と言う楽曲をデラックアのテーマとして。
オペレッタとは関係ない楽曲ですが、オペレッタでは同じ作曲家の作品を入れたり、まったく違う作曲家でも場面に合っている楽曲を入れたりと、こういった事が時々行われるようです。
YouTubeに原曲がありましたのでリンクを貼っておきます。
Sylphen-Polka Op.309
Nr.4 Auftritt des CARAMELLO
もう一人の主役、カラメッロ登場。軽快な楽曲で合唱との掛け合い、今回の歌い手さんはミュージカルも経験されている方なので、後半のタランテラは特に注目です!大いに歌って踊ります!
Nr.5 Duett
アンニーナとカラメッロが痴話喧嘩!?
恋人が1ヶ月も音信不通だったら、そりゃ〜怒るだろう。とは言え、今回のオペレッタは基本どのキャラクターもすぐ仲直りしますので、安心して見てられます。
この楽曲の後奏は2幕冒頭の楽曲としても使われ、やはりたいへん優美なワルツです。
Nr.6 Quartett
カラメッロとアンニーナ、パパコーダとチボレッタが「今日はカーニバル!」と歌う楽曲はシュトラウスらしい華やかなワルツです。
特筆すべきは中盤にポルカ風な楽曲が織り交ぜられていて、手が込んだ作りになっているところ。ただ取って付けた訳ではなく、オペレッタの楽曲にある旋律から導き出されたような気がします。
Nr.6 1/2 Auftritt des HERZOGS
いよいよ主役のウルビーノ登場です。
劇中曲の中でも、何も語る必要のないくらい名曲。屈指のテノールアリアをお届けします。
Nr.7 Finale 1
序曲で流れた舟歌がカラメッロの歌で現れます。
後半はデラックアの誕生日を祝うシーンで、合唱が歌います。
お気づきかと思いますが、1幕だけ見てもワルツが盛り沢山です。ちょっと多いような気がしませんでしょうか?
けれどもこれが飽きる事がなく、むしろもっと聴きたくなっていくのは、ワルツ王と呼ばれたヨハン・シュトラウス2世のなせる技。
これは本当にすごいことだと思います。
第2幕
Nr.8 Introduction und couplet
2幕の序曲のような位置付けの楽曲。やはりワルツで始まり、序曲や1幕フィナーレで歌われた「カラメッロの舟歌」が奏されます。
ただ繰り返されるだけではなく上方に転調され、さらに美しさが増しているところ、シュトラウスのこういった細やかな手法が素晴らしいです。
Nr.9 Lied
アンニーナのアリア。短い曲ですが緩急もあり、とても面白みがある楽曲です。アンニーナらしい強気な歌詞も相まって楽曲を引き立てます。
今回も歌詞は、ドイツ語から一つずつ日本語へと訳し、さらに歌いやすく修正も加えております。
Nr.10a Duetto
序曲のワルツがこちらに登場します。オリジナルは歌もあるのですが、今回は2幕のBGMとして引き立てます。
オペレッタは演出によって曲順が入れ替わることが良く起こります。
同じ演目でも、違った曲順や、楽曲の使われ方を見つけるのも、また見どころの一つでしょうか。
Nr.10b Duettino
楽曲中におもしろい箇所があったので、とりあげてみます。
ご覧のとおり、音符が書かれていないのです。セリフのように歌うという指示ですが、おもしろいのは音符の符尾の長さで大体の音程を表現してあって、なんとなくニュアンスが伝わってくる書き方がなされています。
クラシック音楽のたいへん自由な発想です。
Nr.11 Ensemble und couplet
「すごいご馳走!」と歌われる合唱の見せ場です。サルビア21では舞台装置、小道具などの制作も合唱団員が行っていて、今回もたくさんの「すごいご馳走」が並びます。
Nr.12 Quartett NINANA
ウルビーノ、アンニーナ、チボレッタそしてデラックアの4人で歌われる静かで優美なワルツ。
「愛の歌をあなたに」と歌われる「ニナナ」というタイトルは、ケルトの言葉で「愛」を意味する「nin」に結びつきを感じます。
Nr.13 Finale 2
いよいよクライマックスへ向かって突き進みます。メインテーマのワルツ(Nr.10a Duetto)にオブリガートで歌われるところや、ソリストたちの掛け合いで進む楽曲、やはりフィナーレは聴きどころ満載です。
サルビア21公演ならではの演出
もちろん最高に盛り上がったところで全員でのダンスもございます!
そして今回は演出家たっての希望で映像も使った演出も、どんな映像かはぜひ舞台をご覧いただければ幸いです。
今回の公演は、いわゆる有名ではない、たいへん珍しいプログラムです。けれども楽曲はどれも本当に美しく、この演目を編曲、指揮できますこと、たいへん嬉しく感じております。
ぜひ、どのような楽曲なのか、確かめに来て頂けたらと思います。
駆け足で進めてしまいましたが、公演のガイドにお役立て頂ければ幸いです。
2018.6.Tokyo.
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