クレッシェンド記号とcresc.の違いについてのお話です。
クレッシェンド【crescendo】このように書きます。
だんだんと音を強める(大きくする)といった意味で、イタリア語【crescere】(クレッシェーレ)が変化したものです。【crescere】にもやはり『育つ』『成長する』『大きくなる』の意味があります。
楽譜に書かれる音楽用語、音楽記号のおもしろいところに、イタリア語の『文字』で書かれているものと『記号』で書かれているものがあります。
もちろん、クラシック音楽の場合は作曲者の発想に基づき、ご自身の考えも加え演奏されることが目標だと思いますが、ここでは伝統的な考え方について少し触れますので、それらを考えていくための参考になれば幸いです。
伝統的な考え方
「言葉よりも記号の方がエネルギーが強い」と言うのが、クラシックの伝統的な考え方として、脈々と受け継がれてきていることのようです。
要するに……
- ある拍や音からクレッシェンドしてほしいときは『記号』
- この辺りからクレッシェンドを始めてほしいときは『cresc.』
といったことが基本的な考え方です。
私も、作曲の師匠から教わったことですが、私自身の曲の場合もやはり、ある決まった音から確実にクレッシェンドを初めてほしいときは『記号』を使い、あやふやにこの辺りからクレッシェンドをしてほしい場合は『cresc.』としています。
しかし正解ではなく
伝統的な考え方の話をしておいてなんですが「これだけが正解ではない」ことを忘れないで頂きたい。何故かと言うと……
もしかしたら、この辺りからクレッシェンド~のときにcresc.を書く作曲家がいないとも限りません。
さらに、私自身もそうですが、リハーサルのとき、本来cresc.と書くべきところに時間を惜しんで
次のように
メモのように書く場合があります。
そのまま出版に回れば間違いなく
と印刷されてしまうでしょう。
(私は多分直しますが……たぶん)
まとめ
結局のところ楽譜はメモであって、どちらも正しいのかもしれません。まさに正解のないクラシック音楽の素晴らしき世界!
そんなことに思いを馳せ練習に励んでいますと、どうでしょう?今日の練習が少しだけ楽しくなりませんでしょうか?
当サイトのこと
本日も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
音楽の世界には「教科書には書かれていない」「音楽大学でも教えていない」ことがたくさんあります。これらを知ることで音楽人生がより豊かになっていきますし、音楽に関わる多くの方に知ってほしいことでもあります。
今回のお話では、クレッシェンドの表記の違いについても、なかなか取り上げられないことのように感じ、紹介してみました。
こうした「教科書には書かれていない」ことを少しでも伝えられますよう、引き続き当サイトのブログやTwitterなどで発信してまいります。
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2017.11. Tokyo.
作曲家/ピアノ講師
小林 樹(@hikarunoatorie)