先日
「浄書を手伝ってほしい」
と、久々にそのようなお仕事を頼まれましたので、今日は楽譜を綺麗に清書書きする「浄書」というお仕事について。
浄書とは
浄書(じょうしょ)とは「草稿などの原稿をきれいに書き直すこと」を言います。
今でこそ、ほとんどパソコンで行いますが、ほんの少し前までは手書きの楽譜でした。
「クラシック音楽」と「浄書」との間には、切っても切れない関係がありまして……
印刷機が普及する以前の話。
作曲家は曲が書き終わると浄書屋に持って行き、パート譜を作ってもらいます。
また演奏までに時間がない場合は、作曲家が書いているすぐ横で、浄書屋さんがパート譜に直していた
というような事がよく行われていました。
コンビニやキンコーズ(印刷屋さん)の隣に住んでいる。みたいな感じでしょうか (^^)
作曲家の逸話
- ヴィヴァルディは浄書屋さんよりも速書きができた?
- J.S.バッハは奥様が浄書をしていた
- ベートーヴェンが持ち込んだ楽譜はよく臨時記号が抜けていて、よくケンカになった?
そんな逸話が絶えません。
作曲の勉強に
楽曲を写す作業はたいへん勉強になります。
シューベルトは一時期この浄書を行なっていて、当時の名だたる作曲家の楽曲に触れたことが成功につながった。作曲家人生を助ける大きな武器になったのだ。
と、何かのCDのジャケットに書いて合ったのを覚えています。
そう言えば、それにあやかって、当時携わっていたオーケストラに
「私も手書きのパート譜を書かせてほし」
と、願い出たのだけれど、
「見にくいからパソコンでやって」
と、断られてしまいましたなぁ。手書き、自信あったのだけれど。
手書き楽譜の需要
電子機器がこれだけ普及してきている現在においても、この「手書きの浄書」ということが時折、必要なことがありまして
オケの練習の時
ヴィオラのパート譜にスコアの内容を貼り付けようということになり、すぐ書けるような内容だったので、私は手書きをしましたら、一緒に弾いている方がとても喜んでくれて
「大切にします!」
と、お言葉を頂きました。
やはり手書きの楽譜は、なんというか……手紙と一緒で心が見えるというか、あたたかな温もりが感じられます。
今日すっかりパソコンで行われるようになった「浄書」ではありますが、わかる人にはわかる手書きの美しさ。あなたも体験してみてはいががでしょう。
当サイトのこと
本日も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
音楽の世界には「教科書には書かれていない」「音楽大学でも教えていない」ことがたくさんあります。これらを知ることで音楽人生がより豊かになっていきますし、音楽に関わる多くの方に知ってほしいことでもあります。
今回のお話では、正にクラシック音楽全盛期の浄書についての話題に触れましたが、こう言った歴史的背景(文化的背景)に触れることもひとつの音楽のヒントにつながるのでは?と感じております。
ところが、私たちの住む日本の音楽教育の場では、こうした音楽に直接関係のない内容を教えることは二の次とされる傾向があります。本当に残念です。
だからこそ、私のレッスンでは「教科書には書かれていない」ようなちょっと面白そうなことを、できる限り生徒さんに伝えています。
音楽への理解をより深めたい方がいらっしゃいましたら、ぜひ一度、体験レッスン(無料)をお試しください。
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2017.6.Tokyo.
2021.2.Tokyo.
作曲家/ピアノ講師
小林 樹(@hikarunoatorie)